ウィーンの文化で忘れてならないのが『カフェ』で過ごす時間。2011年よりカフェで過ごすそのものが世界無形遺産として登録されているほど、ウィーン人にとってカフェはなくてはならないものです。
日本ですとカフェは待ち合わせ場所。ちょっとした商談やおしゃべりをしながらコーヒーや軽食を取るといったイメージですね。しかし、ウィーン人にとってカフェは憩いの場または社交の場でもあります。
例えばある人は仕事として交渉取引をし、文化人、知識人達は白熱した討論をする、または新聞や本を読んだり、おしゃべりを楽しんだりと各々が自分の好きなことをゆったりとする第2のリビングとして自分の家のようにカフェで過ごしているのです。
カフェにはヨーロッパ中の新聞や雑誌が常備されていて、自由に読むことが出来ます(日本の新聞はありません)。最近はフリーWiFiがあるカフェがほとんどですので、タブレットや携帯片手にゆっくりとカフェで時間を過ごしている旅行者の方々もよく見かけます。
私はコーヒー一杯で携帯からメールを確認したり、サイトを書いたりなど2.3時間仕事をすることがあります。人の中で落ち着かないと思うかもしれませんが、人に囲まれながらも、いきつけの伝統的な建物のウィーンのカフェに一歩入ると不思議と落ち着き、自分の空間が生まれてきて、家や会社にいるより集中力が増してくるんです。
カフェでは一杯のコーヒーを注文するだけで、30分で帰ろうと1日過ごそうと誰も何も言いません。それよりも、どのカフェでも常連さんになると、いつも来る時間になると、何も言わなくともいつもの場所にリザーブをしておいてくれるのですよ。
常連さんの好みの飲み物はお店の方はよくご存じですから、改めてオーダーしなくてもいつものものをテーブルに運んできてくれるようになります。これがウィーン子のステータスでもあります。
旅行の合間には是非カフェに行き、くつろいでウィーン人の生活に触れてみてください。
カフェは大きく分けて伝統的なカフェ、お菓子屋さんカフェ、コンサートカフェの3種類があります。どんな感じなのかご説明いたしましょう!
もくじ
伝統的なカフェ
★カフェ ラントマン
★カフェ ツェントラル
★カフェ ムゼウム
★カフェ ハベルカ
参照カフェラントマンでハリー王子とめーがん妃のロイヤルウェディングケーキが食べられる
伝統的なカフェは基本的に男性が蝶ネクタイをして給仕をしてくれます。レストランと一緒になっているところも多いので、カフェだけでなく食事を楽しむこともできます。19世紀から20世紀初頭にかけて、伝統的なカフェは知識人、文化人、政治家などの仕事場、討論の場として大活躍していました。
建物はほとんど当時のままの残っており、広々とした空間に大きな柱、大理石のテーブルの周りを囲むようにビロードが張られたベンチ型椅子、そして上品な木製の椅子が置いてあり、アンティークで豪華な店内を見ていると、タイムスリップしたような豪華な気持ちにさせてくれます。
カフェと文化が密接だった19世紀は、カフェからも独特な文化が生まれているんです。カフェを仕事場とし、文学に名を残した人は『カフェ文士』と呼ばれていて、著名なアルテンベルクはカフェで過ごしている人を描写した短編小説を書いています。その当時の生活を垣間見ることが出来て、大変興味深い小説です。
アルテンベルクは住所を『カフェ ツェントラル』にしていたぐらいカフェで1日の大半を過ごしていた人です。
伝統的なカフェが早朝から深夜まで開店しているところが多く、新聞、雑誌のほかその当時を思い出させる図書館ように辞書や本がずらりと並んだ本棚があり、調べ物があると自由に見ることが出来たようです
※今はほとんど自由に見ることはできません
物書きの人が急に何かを書き始めようとすると、給仕の方がサッとペンと紙を差し出していたなんて記録もあります。粋な心遣いもその当時の文化だったのでしょうね。
20世紀になり、カフェ文化人がカフェに通わなくなったのは、その当時のカフェ文化を創り出した知識人、文化人のほどんどがユダヤ人で、ヒトラーの出現により亡命してしまったからなんです。戦後、もう一度カフェ文化が戻ってくることはなかったそうです。残念ですね。
現在は、カフェ文化をウィーン人が引き継ぎ、第2のリビングとして常連のカフェを持ち、自分の空間を楽しんでいるのです。
カフェコンディトライ(お菓子屋さんカフェ)
★ カフェ デーメル
★ カフェ ハイナー
★ カフェ ゲルストナー
カフェコンディトライはカフェと自慢のオリジナルスイーツがメインのカフェハウスの事です。入り口を入ると、ショーウィンドウに色とりどりに美しくコーディングされたケーキずらりと陳列していて豪華絢爛なケーキはもう芸術です。他にもチョコレートやクッキー、マカロンなど可愛いお菓子コーナーも現地の人だけでなく、旅行者にもお土産として大変人気があります。
豊富な種類のケーキの中、ウィーンを代表するケーキアプフェルシュトゥルーデル(ウィーン風アップルパイ)とザッハトルテはどのカフェでも取り扱っています。
甘いものには目がない人は本場ウィーンのケーキを色々と試してみたいところですが、日本人にはボリュームも多く、余り沢山は食べれないと思います。そのうえ、見た目は芸術作品のケーキは、日本人にはかなり甘く感じると思いますので、コーヒーと一緒に注文するといいです。
Demel(デーメル)や Gerstner(ゲルストナー)のようにカフェの名前に K. u. K. Hofzuckerbäckerと書かれていたら、20世紀初頭までは王宮御用達だったコンディトライだった証拠で、皇帝制度がなくなった今日でも、高級感と名誉のために使用することが許可されています。
ケーキ作りに興味が在る方は、ウィーンではあちこちでお菓子つくり教室が開催されていて、シェフ自らケーキ作りを指導してくれます。本場ウィーンでお菓子つくり教室に参加するのもいいですね。
コンサートカフェ
★ カフェ ドームマイヤー
★ カフェ シュバルツェンベルク
★ カフェ シュペール
コンサートがカフェ店内で随時開催されていて、コーヒーを飲みながらコンサートも同時に楽しむことが出来ます。 1844年、当時18歳だったヨハンシュトラウスは『カフェ ドームマイヤー』でデビューし大成功を収めています。現在も週末にはドームマイヤーでシュトラウスコンサートが開催されています。
カフェがコンサート会場に頻繁に使用されるようになったのは、19世紀はシュトラウス一世、二世の出現により、クラッシック音楽とダンスが庶民に浸透し、熱狂したからなんです。
そのころまだコンサートホールは不足していて、お金持ちの家のサロンやカフェでもコンサートが開催されていたため、多くの有望な新人音楽が誕生するようになりました。コンサートを開催するカフェでは、有名な音楽家に演奏してもらおうと店主自ら走り回っていたそうですから、かなりのレベルのコンサートだったと予想されます。
今でもその風習が残っていて、コンサートカフェがウィーン中のあちこちに存在しています。
改まったコンサート会場とは違った、本場のコーヒーを飲みながらウィーンスタイルのコンサートを楽しんでいる人達を見ると、ウィーンが音楽の都、お菓子の都、芸術の都と言われるのが理解できる気分にさせてくれます。
ウィーン旅行の中にカフェ巡りを組み込むのもいいですね。
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