現在、アルベルティーナ美術館で開催されている特別展「FASZINATION PAPIER」は、紙という素材の質感や表現力、その多様な可能性をテーマにした大規模な企画展です。紙は記録媒体として捉えられがちですが、ここでは6世紀にわたる美術史の中で育まれてきた紙の豊かな表現世界が紹介されています
その中で一際目立つのは、浮世絵で綴られた『源氏物語』の壮大な蛇腹絵巻。
歌川国貞、広重、芳年といった幕末を代表する絵師たちが手がけた三枚続34組、全長約26メートルにも及ぶ色鮮やかな木版画です。

作品は古典文学をそのまま忠実に再現したものではなく、江戸時代の感性や流行に合わせて描き直された「源氏絵」と呼ばれるスタイル。
浮世絵師たちは、平安時代の王朝での優雅な物語を、江戸時代の衣装や暮らしの風景と重ね合わせ、身近で華やかな情景として表現しています。こうして生まれた源氏絵は、単なる挿絵だけではなく、その時代の風俗や季節感、美意識を表現し、恋や憧れ、四季の移ろいを楽しむ大衆文化として庶民の間で大流行しました。
実際に自分の目で見ると、館内でもひときわ際立つ色彩の鮮やかさ。
日本の浮世絵が世界で愛される理由が、すっと腑に落ちる美しさでした。
日本人として思わず誇らしくなり、気づけば何度も足を止め、眺めては、たくさん写真を撮ってしまいました。
特に印象に残った「源氏四季ノ内 冬」は、幕末の浮世絵師・歌川国貞や歌川房種らによる錦絵シリーズ。雪景色や雪見の宴、火桶を囲む男女など、冬の静けさと室内のぬくもりを対比させながら、『源氏物語』の雅な世界観と情緒を描き出しています。

白い雪と華やかな着物の色彩のコントラストが特に印象的で、江戸時代に流行した「源氏絵」の魅力が伝わってきます。赤いお盆にちょこんと載せられた雪うさぎは、冬の終わりや子宝、幸せを願う日本らしい象徴。
ウィーンも生まれ故郷の北海道も、冬のあいだ外は凍える寒さでも、
一歩室内に入ると驚くほどあたたかい――そんな感覚がふと重なったのかもしれません。
こうした風流な季節の遊びは、ヨーロッパではあまり見かけないです。(多分、ありませんね😊)
四季を愛で、移ろいの中に美を見いだす――そんな日本ならではの心を、ウィーンであらためて感じられた時間でした。
2026年3月22日まで開催。
紙の表現の奥深さと、日本の浮世絵の美しさを同時に楽しめる、とてもおすすめの特別展覧展です。



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