モネ特別展 国会議事堂

アルベルティーナ美術館

モネの作品中で印象的な要素が強い『国会議事堂』の連作が展示されています。改めて3枚同時に見るとモネの洞察力の素晴らしさが伝わってくる作品です。

1899年~1901の間モネは度々ロンドンを訪れました。モネの息子が留学先のロンドンで病気になった時も、同地に滞在しテムス川の対岸にある病院から見た国会議事堂の連作を描き続けました。同じ場所から異なる時期、時間、天候で制作しています。

厳格な建物が時間の経過とともに霧の動きによって変化する太陽の光と水の輝きを表現しています。

霧が深くなるにつれて、建物の輪郭がぼやけ曖昧になる3枚の絵画を鑑賞していると、まるで時間の立つのも忘れその場に立ち尽くしているような錯覚に陥ります。モネは『霧がなければ、ロンドンは美しい町とはいえないだろう。この街に不思議な拡がりを与えているのは霧なのだ。霧というこの神秘的な外套をまとっているおかげで、町のどっしりした規則的な建物が崇高なおもむきを帯びるのだ』というほどロンドンの霧に魅惑されていたようです。

当時モネが見たロンドンの濃い霧には、燃料として使用されていた石炭の煙やすすなどの大気汚染が混じっていました。現在ではモネの絵画にあるような霧はみることが出来ません。急速に進んだ産業革命により多くの命が失われたロンドン、スモックが深い霧の原因だとモネが知ったとしたら、この連作はなかったかも知れません。

しかし、ともすれば見逃してしまう日常の変化をモネのような洞察力でしっかりと見つめていきたいと考えさせられました。

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