ウィーンにはたくさんの美術館、博物館があり、その中でも自然史博物館はヨーロッパで最も古い自然関係の機関を持った博物館のひとつです。この自然史博物館は、マリア・テレージアの夫であるフランツシュテファンのコレクションをベースとして築かれました。
フランツ・シュテファンは、学問的に自然研究に積極的に取り組み、動植物、鉱物学に精通した研究者でした。
現在の展示物はなんと約3万点という膨大な数!鉱石、化石、恐竜の模型や骨、動物のはく製などが40室にずらりと展示されており、地元の親子連れでいつも賑わっています。子供達がワイワイ言いながら楽しんで見ているのは、実物大の恐竜を復元したロボットややキリン、ゾウの前のはく製前。
生きている動物の前ではこの距離で見ることが出来ませんので、子供たちは大歓声で写真を撮ったり、写生をしたりしています(私は正直、はく製よりも生きた動物がいる動物園の方が好きです)
中でも重要な展示物『ヴィレンドルフのヴィーナス』について今回はご紹介したいと思います。
ヴィレンドルフのヴィーナスは紀元前29、500年旧石器時代の像(はにわ)です。1908年ニーダーエステライヒ州のヴァッハウ渓谷の小さな村『ヴィレンドルフ』で鉄道建築に伴う考古学的調査によって、たった25センチの深さの場所で発掘されました。
考古学的に大変重要な像ですので、高校の世界史の教科書にも載っており、なんとなく見おぼえがある方も多いでしょうが、高さ11センチしかなく、実物を見るとかなり小さく女性の手のひらにすっぽり乗るぐらいの大きさです。
この像は足がない、豊満な裸体女性を表しています。
像の特徴は
膝はわずかに角度がついて、細い腕と手にはギザギザなリング模様があり、大きな胸の上に置いています。頭も少し傾いていますが、顔はありません。
下半身はしっかりとしていて、お腹も大きくでっぱり、女性部分が意図的に強調されているのが分かります。元は赤鉄鉱でしっかりと色づけされていたようですが、発見した翌日に水で洗ってしまい、かなり色が落ちてしまったとか。。ちょっと残念です。
この像は女性らしさの象徴、理想的な女性、多産や不妊の守り神、旧石器時代のポルノ的存在の像であるなど色々と解釈されていますが、女性を強調している事は間違いありません。
ポルノ的存在というのは面白い解釈だと思いましたが、Facebookが2018年の3月1日この「ヴィレンドルフのヴィーナス」の画像を検閲で削除したことを謝罪しています。2017年12月に、イタリアの芸術家がFacebook上に投稿したことがきっかけです。
引用 Facebook zensiert “Venus von Willendorf”
画像が「危険なポルノ」として検閲で削除された後、掲載した芸術家が「このような検閲は恥ずべきことで、抗議に値します」と反発し、展示しているウィーン自然史博物館も「3万年間、彼女は衣服を着ていなかった。ヴィーナスは裸のままでいるべきです!」と、検閲を批判したからです。
現代でも話題を呼ぶ『ヴィレンドルフのヴィーナス』ですが、旧石器時代の人類学を知る貴重な像である事は確かです。
でも、仮に私がフェイスブックに『ヴィレンドルフのヴィーナス』を掲載しても。。もう、削除されないですよね(笑)
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