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黄金の装飾初期の作品 ユディット

2018/12/23
 

クリムトの『黄金の装飾』初期の作品ユディットが2019年東京、愛知で開催される特別展に展示されることが決定しています。

半年間、ベルべデーレ宮殿を留守にする事を考えると少し寂しい気持ちもありますが、日本で多くの方が本物のユディットを鑑賞するのを心待ちにしている事かと思います。クリムトが表現した旧約聖書のユディトを目の当たりにて『ユディットは何と妖艶な女性だろう!』と感動するに違いありません。

ユディットは1901年ミュンヘンで開催された第8回国際芸術展に出品するために同年に制作されました。光琳の金箔を用いた方法を独学で学び『本物の金箔』を用いた初期の作品です。是非、特別展に足を運んで鑑賞してください。本日はユディットについて解説したいと思います。

クリムト黄金様式とは 尾形光琳との出会い

当時のウィーンはハプスブルク家が消滅する前でありながら、医学、芸術、学問の爛熟期であり、目覚ましい発展を遂げています。画家の間では古い伝統を重んじるアカデミックスタイルと『JUGENDSTILユーゲントシュティール』(世紀末スタイル)に分裂します。

クリムトは見たものをそのまま写実的に表現するアカデミックなものより、内面的なもの、を表現するために、自ら『SECESSIONゼセッション』(ウィーン分離派)の代表となり結成しました。

1863年にウィーン万博が行われました。クリムトは尾形光琳の『紅白梅図屏風』の作品に衝撃を覚え、日本に留学することなく、独学で金箔技術を習得し、絵画の中に取り入れることに成功しました。これがクリムトの『黄金様式』(黄金時代)と呼ばれる画法です。

日本人にたくさんのファンがいるのは、クリムトの『黄金様式』は光琳がルーツであり、琳派独特の色使いや特徴的な渦巻き、唐草模様をクリムトも取り入れているため、江戸時代からの日本文化の香りがするからだと思います。

 

ユディットの物語背景

メラリの娘ユディトはマナセと結婚したが、夫を日射病で失って寡婦となった。彼女は美しく魅力的な女性で多くの財産を持っていたが、唯一の神に対して強い信仰を持っていたため、人々から尊敬されていた。

アッシリアの王ネブガドネザルはメディア王との戦いにおいて自分に協力しなかった諸民族を攻撃するため、司令官ホロフェルネスを派遣する。ホロフェルネスは軍勢を率いてユダヤへやってくるとベトリアという町を囲んだ。水源を絶たれたため町の指導者オジアは降伏を決意するが、ベトリアに住んでいたユディトはオジアと民を励まし、神への信頼を訴える。

ユディトはそこである作戦をたてる。それはユディト自身が着飾ってホロフェルネスのもとに赴くというものだった。ユディトは神に祈って、ホロフェルネスのもとへ向かう。エルサレム進軍の道案内を申し出た美しいユディトをホロフェルネスは喜んで迎えた。ユディトは陣中で出される異邦人の食べ物を決して口にせず、4日待った。

4日目にホロフェルネスは酒宴にユディトを呼び出した。ホロフェルネスは泥酔し、やがて天幕のうちにユディトは眠るホロフェルネスと2人だけで残された。ユディトは眠っていたホロフェルネスの短剣をとって彼の首を切り落とした

ユディトは侍女と共に、首を携えてベトリアの町へ戻り、事の次第を報告した。やがて、司令官殺害は包囲軍の知るところになり、激しい動揺を引き起こす。ユダヤ人はこの機会を逃さず、出撃し、敗走するアッシリア軍を打ち破った。

ユディトは105歳でなくなるまで、静かにベトリアの町で一人暮らした。

出典 ユディット ウィキペディアより

 

ユディット 作品解釈

作品を目の前にすると、女性の方でも妖艶なその姿にはっと息をのみます。

これまでのユディットをモチーフにかかれてる画家の作品は洋服を着て、ホロフォネウスの生首を切り落とした英雄として表現されています。しかし、クリムトのユディットは女性のエロティシズムを表現することに焦点を当てているため、官能的なインパクトが強烈に伝わってくるからです。

キャンバスいっぱいに描かれたユディットは口には緊張感がなく半開きになり、少し上向き加減で半分閉じられた目線はこちらをみているかのようです。ヌードをそのまま描くより、部分的に左の胸の上にある透き通った青色とピンクの布がユディットの肌に緊張感を与えます。それなのにいやらしく感じないのは、金箔で描かれたデザインチックな模様と背景が現実離れをさせ、神話的なユディトに見えるからです。

ユディットの右下にはホロフォネウスの目が閉じられた生首があります。斬首した後の放心状態なのか、それとも勝利の喜びなのかまるで髪をいじって遊んでいるかのように見えますね。クリムトにとって、彼女の美しさの罠にかかり命まで奪われてしまったホロフォネウスの結末がさほど大事でない事を表現しています。

ユディットが豪華な宝石がちりばめられた金のネックレスとベルトを身に着けることで、彼女が高貴な身分であったことを表しています。また、背景に描かれている山、ブドウ、イチジクの実は旧約聖書に登場するアッシリア王のセンナケリブが建設した庭園に由来しています。

モデルの女性はクリムトの愛人であったアデーレ ブロッホ バウアーと言われ彼女をモデルに何枚も絵を描いています。人妻であったサロンの女王アデーレをクリムトはユディットのような高貴でありながら、女性の妖艶さを重ねていた事でしょう。ユディットにふさわしいモデルがそばにいたからここまでダイレクトに伝わるように表現出来たと私は感じています。

絵画と額縁の装飾を作品の完成としていたクリムトは、彫金師であるクリムトの弟にデザインさせています。屏風のような金の縁取りを感じさせる額縁は、ユディットの美しさを更に強調し、彼女が神秘的な人物であるようにも見えてきます。

日本で公開された際には、たくさんの方に感動を与える一枚になることでしょうね。

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