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ヨーゼフ・レヴィンスキーの肖像画

2020/07/02
 

クリムトの絵画についてはどの時代、スタイルで描いても、素晴らしい絵画を描いており、ブログの記事にしたい作品が沢山あるのですが、今回は初期の作品肖像画『ヨーゼフ・レヴィンスキー』ついてご案内したいと思います。

クリムトは初期作品を、正統的にアカデミックな技法で描いており、劇場装飾などを手掛けるようになると、彼の卓越した才能はすぐに評価されていきます。ウィーンへお越しの際は、完成度が高い初期作品の代表作、ブルク劇場の天井画、デッサン画は是非鑑賞してみて下さい。圧巻です!

ブルク劇場の作品につきましては、後ほど記述する予定ですが、今回ご紹介します肖像画の『ヨーゼフ・レヴィンスキー』はブルク劇場と縁の深い、有名な劇場俳優でした。

この肖像画は、クリムトがアカデミックな画法から抜け出し、自分が表現したいと思っている方向へ向かっている芸術スタイル改革を顧みる事が出来る、初期の作品の中でとても興味深い作品です。

ヨーゼフ・レヴィンスキーの肖像画を描くきっかけ

この肖像画は1894年、クリムトが宮廷役者であったヨーゼフ レヴェンスキーが演劇(ドラマ)『クラビコ』の中で登場するカルロスを演じているところを描いています。

ちなみにクラビコとは、オペラ『セビリアの理髪師』『フィガロの結婚』などの劇作家として有名な、フランス作家ボーマルシェの波乱万丈な人生に関するゲーテが書いたドラマの事です。ヴェルディのオペラで有名なドン・カルロとは登場人物や背景、内容などは違ってきます。

人物を非常にリアルに描いている事から、クリムトの初期の肖像画の一つである事が伺えます。そこにユーゲントーシュティール【世紀末芸術】の特徴である装飾パターンが側面に組み合わされています。

クリムトは商才があったようで、工芸学校在学中から、お金持ちのユダヤ人邸の天井画、壁画、肖像画などの注文を受けるようになります。元々絵画で生計を立てようと思っていましたので、そこで、弟のエルンスト、友人のフランツ・マッチュと3人で『芸術カンパニー』を設立しました。

幸運なことに、彼らの素晴らしい作品の評判はオーストリア政府まで届き、ついには、劇場装飾画家として仕事が入るようになっていきます。

その中でも、ブルク劇場の天井画は第一回皇帝賞を受賞するなど高く評価されています。天井画を手掛けている間、ブルク劇場の役者のリハーサルに立ち会う機会が多く、クリムトの天井画を観た役者達から、肖像画を描くチャンスもやってきました。

クリムト自身は、芸術的触発を受けたアーテイストの注文を受け、彼らをキャンバスの中で表現していきます。その中でも、36年間舞台でドン・カルロスを演じたヨーゼフ・レヴィンスキーの肖像画は、クリムトの代表作品となり、画家として更に有名になるきっかけとなりました。

絵を描く才能は勿論の事、お金になる絵画を描くチャンスが来たら逃さない(変な表現ですが)!この才能も持って生まれたものでしょうね。

ヨーゼフ・レヴィンスキーの肖像画解説

では、ヨーゼフ・レヴィンスキーの肖像画について解説したいと思います。この作品は3部に分けて表現されています。

中央は舞台衣装を着た俳優ヨーゼフ・レヴィンスキー自身です。舞台に現れた俳優のキャラクターを表現するかのように、口を閉じ、腕を組み、足を広げ、力強く描かれています。ドン・カルロスの白と黒を基調にした衣装は、背景に溶け込み、細部はぼかしています。これが見ている人に暗い緊張感を与えますね。

クリムトはドン・カルロスの中でも一番好きな場面で、ドン・カルロスの衣装やボディーランゲージを通じて、ヨーゼフ・レビンスキーの自意識高い性格を見事に表現しています。

右下には煙が昇る古代の火盤があります。通常、足台は通常4本ですが、3本しか描かれていません。この3本の足はクリムト、弟のエルンスト、そして友人のフランチュ・マッチュを表しています。そして、煙は上部にあるマスクに向かって上っているのが見えますね。この煙は彼らが、新しい芸術スタイルに向かっている芸術の改革『ゼセッション』を表現しているのです

その上に、可愛らしいマスクを持った若い女性を描いています

昔は殆どが男性が俳優として舞台で演じていましたから、これからは女優も同じように舞台に立つ事を予言しているのを重ね合わせて、新しい芸術スタイルが必要なんだとのメッセージが聞こえてきそうです。クリムトほど女性を魅惑的に描ける人はいないと思うのですが、この若い女性も妖艶に表現しています。

左側には、植物の装飾が見られます。不規則に並んでいる金色とグレーの葉は月桂樹です。

月桂樹の葉は『勝利』の意味があるように、ヨーゼフ・レヴィンスキーが舞台俳優として成功した事を、金色と灰色のコントラストは舞台ストーリーでよく演じられる、テーマ『生と死』『愛と憎しみ』を表現しています。

また、縁取りをして、金で装飾している表現から、初期の頃から既に日本画からヒントを得た事がわかります。このように肖像画を解釈しながら、もう一度鑑賞してみると、最初の印象と全く違って見えてきますね。

クリムトの作品につきましては下記の記事もご参照ください

ガス室に送り込まれた女性アマリーエ・ツッカーカンドルの肖像画
尾形光琳の影響を受けたクリムトの画法
1900年のフォトショップ!クリムト ソーニャ・クニップス婦人 
黄金の装飾初期の作品 ユディット
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