写真引用 wikipedia
ベルべデーレ宮殿はコロナウィルス対策により、閉鎖している期間4月3日まで(日程は変更になるかも知れませんが)、毎日15時から有名な絵画をマルクス・ヒューブル氏のMarkus Hübl解説により、フェイスブック、ツイッターにて動画を掲載しています。
これが非常に興味深く面白いのですが、なにせ解説がドイツ語です。そこで、動画の解説を日本語で分かりやすくまとめてみる事にしました。
ヒューブル氏の話している内容を、字幕スーパーのように一語一語翻訳しているのではなく、大まかに内容をまとめている事をご了承ください
※もしかしたら、日本語の字幕が出る機能があるかもしれませんが、私は基本、アナログ人間ですので、高度過ぎて見つけられません。。。知っている方がいたら教えて下さい
今回はエゴンシーレの作品「家の壁」(Hauswand)です。
Egon Schiele “Hauswand”の解説
これはエゴンシーレの作品「家の壁」(Hauswand)です。ベルべデーレ宮殿の修復者スペシャリストは、この写真をX線で照らし、エゴンシーレがこの絵画の構成を、何度も変更したことを発見しました。
エゴン。シーレは最初、この家を立体的に描いて、側壁が見えるようにしたかったのです。しかし、彼はその構成を根本的に変えました。
キャンバス全体に完全に平らに、この家を描いており、側壁は見えません。また、家の壁が古くて荒い質感を表すために、非常に特別な方法を取り入れています。
彼はプライマー(下塗り塗料)なしで、直接キャンバスに描き、チョークと細かい灰色の砂を絵の具に混ぜる事で、壁を荒くぼろぼろに表現しています。
家の窓は左右対称ではなく、人間の目のように見えます。家の中に人は見えませんが、誰かが住んでいる形跡が分わかるようになっています。屋根はわずかに湾曲して描かれています。
この家は、エゴンシーレの母マリアが生まれた故郷、チェコのクルマウ(チェスキークルムロフ)の母親の実家です。エゴンシーレは愛するヴァリーノイジルを連れてきました。
この絵画から、芸術家エゴン・シーレは、学術的(アカデミック)な絵画から遠ざかり、新しい方法で絵画を描いていることが分かります。かつてこの作品は、他の画家によって間違いの表現法(テクニック)として認識されていました。しかし今日、この粗い表面の粗いキャンバス、湾曲した古い屋根の表現は、力強くダイナミックな表現手段として高く評価されています。
エゴン・シーレの好んだ街クルマウと作品との関係
エゴン・シーレの母親故郷であるクルマウ(チェスキークルムロフ)は、ユネスコ世界遺産にも登録されており、『世界一美しい』と比喩されている、中世の街並み、ルネッサンス様式、バロック様式が残る古い町です。
曲がりくねったモルダウ川に位置したクルマウは、エゴン・シーレの母親の出身地でもあり、伝統を重んじようとするアカデミック志向のウィーンに嫌気がさした彼は、恋人ヴァレリーを連れて、隠れ家のように澄んでいた時期もありました。
町に流れるせせらぎの音、狭く曲がりくねった小路、古く低い屋根の建物から、シーレはインスピレーションを得て、作品の構造に影響を与えをます。彼が描いた風景は、教会などの歴史的な建物ではなく、ごく普通の古い家々でした。
私もお客様と、このチェスキークルムロフをへ行くことがあります。(そこでチェコのガイドさんとちぇんじになります。)お城の上から見る町の景色は、まるでおとぎ話のような、可愛らしい町です。曲がりくねった町の構造を暫く見下ろしていると、エゴン・シーレの直線ではない、ゆがんだ絵画の構造が浮かんできます
エゴン・シーレは、人物画だけでなく、風景画も多く描いています。丘の上に上るのが好きだった彼もきっとここからこの風景を見ていたのだろうと思うと、鳥が上から見ているような構造『俯瞰』のルーツはここだろうと勝手に納得してしまう。。
町中を散策している時も、たまにしか来ない私には、チェスキークルムロフの町は可愛らしい町並みに感じるのですが、ここでもエゴン・シーレを思い出し、古く、手入れされていない不規則な家々の壁は、彼の傷ついた心が建物に反映していたと思うと、重苦しく、寂しい気持ちになってくるのです。
エゴン・シーレの作品『家の壁』も、その視点から見ると、不規則な窓の並びと大胆な線は、彼の孤独感、心の叫びが表現されているのだろうと感じてきます。
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