ベルべデーレ宮殿をお客様とご一緒する時は、絵画(特にクリムト、エゴンシーレ)鑑賞が中心になるため、建物をじっくりとご案内するのが、スケジュール上難しいのですが、繊細で豪華な装飾が施されており、見ごたえのある宮殿です。結婚式も宮殿内では行うことが出来るので、私も何度か日本からいらしたお客様の結婚式での通訳としてお仕事をさせて頂いております。
今回はベルべデーレ宮殿で、最も豪華な赤大理石の間をご紹介したいと思います。
赤大理石の間はベルべデーレ宮殿上宮の中心にあり、プリンツ・オイゲン公のゲストが豪華な階段を上がると一番最初に見えるホールとなっています。
ここでは歴史的な出来事がありました。 1955年5月15日、オーストリアが10年間の4か国占領時代(アメリカ、ソ連、イギリス、フランス)から解放された、記念すべき国家条約の調印式がこの赤大理石の間で行われたのです。他国の軍隊に監視されていた屈辱、辛さから解放された、オーストリア国民の喜びの様子は、毎年5月15日になると報じられます。
赤大理石の中央、テラスの傍には、ブロンズのターフェルが床にはめ込まれています。ここに、上記の国家条約の経緯が書かれており、この場所に国家条約の調印を署名した時に使用されたテーブルか置かれていました。
赤大理石のテラスからはウィーンの美しい景色が広がり。街の中心にある、ウィーンのシンボル聖シュテファン大聖堂がはっきりと見えます。国家条約の調印式で書かれた4か国の調印書を、当時のオーストリア外務大臣フィーグル氏が、思い付きでしょうか、バルコニーから庭園で喜びと共に待機していた多くのウィーン市民に公開しています。
天井を見上げると、18世紀初頭のイタリア人の画家、カルロ・カルローニによって製作された、壮大で、見ごたえのあるフレスコ画が目に入ります。
フレスコ画技法は、だまし絵のスタイルで描かれています。このタイプの技法は、部屋の空間を視覚的に広く見せることが出来ます。カルロ・カルローニは天井を高く見せることで、果てしない高空へ古代の神々が飛翔してるような感覚になるように見せています。
フレスコ画のテーマは、プリンツ・オイゲン公を神格化して表現しています。この場合の神格化はプリンツ・オイゲン公の名声を意味し、中央に金色の兜をかぶって描かれ、古代の神々に囲まれています。プリンツ・オイゲン公の頭の金色の兜は、アレキサンダー大王を思い起こさせます
伝説によると、アレキサンダー大王も金色の兜をかぶっていたそうです。近くには、軍神マルスが描かれています。また、時間の神クロノスも描かれており、プリンツ・オイゲン公の不死を約束しています。
暖炉の上にはエキゾチックな動物、ダチョウ、ハイエナが描かれており、これらはプリンツ・オイゲン公所有の動物園にいる動物達です。かつて、彼の動物園はベルべデーレ宮殿の左側にあり、ライオンやヒョウなど、外国に住む数多くの動物がいました。
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